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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 改訂版 「ママの店」


前回までのお話・・・       10 11 12 13 14 15

出てくるぞ!と声が上がり、ガラスから顔が
離れていく。そして外に出たアボカドを、
あっと言う間に十数人の男女が取り囲んだ。
彼らの目の中に憎しみの炎が
メラメラ燃えているのが見える。
アボカドは崩れるように土下座した。

「許してください!あなた方の人生を
無茶苦茶にしてしまいました。
本来なら死んでお詫びを
しなくてはなりませんが、
私はもう死んでおります・・・」

アボカドは取り囲まれて狭くなった空間で、
地面に頭をこすりつけながら
体を痙攣させて泣いている。

「絶対に許さない」

「死んでも許さない」

人々は呪いの言葉を吐きながら、
じわじわとアボカドとの距離を縮めていく。
このままでは取り殺されてしまう・・・いや、
アボカドはもう死んでいる。
どうなるのかわからないけれど、
とにかくこのままではマズイ
何とかしなくてはと思ったとき、
ママが人垣をかきわけて入っていった。
そしてうずくまっているアボカドを抱き、
周りにいる人達に呼びかけた。

「この人は今
心から詫びて許しを乞うているの。
あなた方は皆、謝ったのに許して貰えなくて
苦しんだ人達ばかりでしょ。
あなた達ならこの人の気持ちがわかるはずよ、
人を恨んだままでは絶対幸せにはなれない。
だから、たとえ許すことが出来なくても、
どうぞもう恨まないで」

ママはむせび泣きしながら、必死に訴えている。
二人を取り囲む人々の間に、
動揺が走り回っているのが見え、やがて――

「この男は死んだ。私は生きている!」

誰かが叫んだ。

「死にたくない。生きていたい」

別の誰かが言った。

「そうよ、あなた達はまだ生きているのよ、
生きようとしなくちゃダメ。
他人の為に自分の人生を捨てないで」

ママの言葉を最後に、立ち並ぶ人々の姿が
しだいに薄くなり、やがて完全に消えてしまった。

「さあ、もう誰もいなくなったわ・・・
中に入りましょうか」

ママがまだ地面に頭をつけて泣いている
アボカドの背中にそっと手を置いた。

「いったい何があったんですか、
この人何で泣いているんですか?」

店の中に入るとすぐに
先生が駆け寄ってきたので、
後で説明するよ、今はそっとしておいてあげてと
私は言った。

アボカド――
『ママの店』の常連がまた一人増えた。

「ねえ、ママ、あの人達はどうなったんだろう」

「いっちゃったってことは、
まだ生きているってことだわね」

ママは私の顔を見てニッコリと笑った。

〜つづく

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2008.04.04. (09:35) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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