
前回までのお話・・・
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けたたましい音が耳元で炸裂し、
いきなり眩しい閃光が激しく交差して、
思わず両腕で目を覆った瞬間に、
黒く大きな物体が体を通り抜けた。
私の両側を走り抜けていくのが
バイクの群れだとわかったのは、
しばらく経ってからのことで、その中の一台を、
あの少年が運転していた。
彼はとうとう暴走族の仲間入りをしてしまったようだ。
でも、誰も彼を咎めることなんて出来やしない。
暗い気持ちを抱いたまま、
私はフワフワと空中を飛ぶようにして
彼らの後についていった。
ヘルメットを被らない暴走族の集団、
およそ十数台の大小さまざまなバイクが
ようやく止まった所は何処かの川原だ。
時刻まではわからないが、
とにかく夜であることには間違いない。
空にはキラキラと、たくさんの星が瞬いている。
不良達はみんな髪をリーゼントにして、
黒いジャンパーに細身のジーパンを合わせた
ツッパリスタイルで決めているが、
少年だけは赤茶けたボサボサの髪に
薄汚れた茶色のジャンパー姿だ。
みんなバイクをあちこちに停めて
それぞれの仲間同士で座り込み、
煙草を吸ったり缶ビールを開けたりしている。
少年も、後ろに乗せていた相棒と二人で
砂利の上に腰を下ろした。
寒いのか、両手を口元で擦り合わせて
吹きかけている息が白い。
ろくな物を食べていないのだろう、
栄養失調で髪の色が抜けてしまっている。
少年の寂しげな薄い胸を見ていると、
また鼻の奥がツーンと錆び臭くなり、目が熱くなった。
「もう十二月だもんなあ、寒くてあたりまえか」
前髪をカネの櫛でとき上げながら、相棒が言った。
「おまえのその服と頭、後藤さんが気にしてたぞ。
金が無いのなら出してやるからとまで
言ってくださっているんだ、お言葉に甘えたらどうだ?」
後藤って誰だと一瞬思ったが、どうやら族の頭らしい。
「いや、折角だけど父さんに怒られるから・・・
後藤さんには自分でわけを話すよ」
「そうか、お前んちは怒られると言うより
殺(や)られると言う方が当たっているけど。
なあ、まだ家を出る気はねえのか?」
「うん・・・他にいく所もないし。
それに真面目に帰ってさえいれば、
何もされないからね」
「おまえのその背中ボロボロじゃん?
そりゃ俺らのリンチよりエグイ傷だぞ」
友達の言い方がおもしろく感じたのか、
彼は立てた膝の間に顔を入れ、フフッと笑った。
「よく笑えるなあ、俺だったらとっくに出ちまってるよ。
それか親父をブッコロス」
「父さんが僕を殴ったり蹴ったりするのは
僕を思ってのことなんだ。
ちゃんとしてさえいれば殴られないからね。
ほら、今の仲間の間でもそうだろ、
上の命令には絶対服従だ。
もし、何かへまをしたら同じように制裁を受ける」
「俺は施設で育ったから親のことはわかんねえけど・・・」
わからないけど、お前の親は異常だと
その後言葉を続けたが、彼は笑って首を横に振る。
そうだ、何で家を出ないのだ?
私も不思議でたまらなかった。
幼い頃から異常な環境に育った彼は、
自分が今まで受けてきた虐待を
あたりまえのことだと受け止めている。
しばらく会話が途切れて、
二人ともぼんやりと夜空を見上げていたのだが――
「もうすぐクリスマスだよなあ・・・」
相棒が独り言のように呟いた。
そうか、今は十二月なんだ。
「なあ、サンタクロースっているのかな?」
いきなり相棒が嬉しそうな声で言ったので、
サンタクロースを信じる年頃でもあるまいにと、
思わず私の口元が緩んでしまう。
「さあ、どうだろう・・・いたとしても
僕のところにはきてくれないよ。僕は出来損ないだからね」
彼は薄く笑いながら下を向き、
指先で運動靴の紐をいじり出した。
「出来損ないってことはないだろう?
そりゃ、俺達は盗みやカッパライの常習犯だけど」
相棒はちょっと困った顔をして彼を見ている。
「サンタクロースがもし僕のお願いを聞いてくれたら・・・」
彼はそう言ったまま言葉を切った。
〜つづく
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2008.09.27. (09:31)
小説 文学 /
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